7月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開決定!

「今年最も驚くべき日本映画」
ーデニス・リム(リンカーンセンター映画部門ディレクター/映画評論家)

ベケット的なトゲに覆われたSFミステリーとも言うべき鈴木洋平監督作『丸』は、大島渚監督の『絞死刑』以来50年を経て日本に再誕した最良のコメディ・ノワールである!!
ートニーレインズ(映画評論家

INTRODUCTION

平凡な無職男の部屋に突如として現れた謎の球体。それを目撃した者に降り掛かる奇妙な出来事。それはやがて不可解な引力で、予測不可能な事態をドミノのように生み出していく…。現代的なホームドラマが、黒く歪んだSFミステリーへと変貌する。それは閉塞した日本の現実に対する強烈なメッセージか?それとも観る者に実存的な問いを投げかける不条理劇か?その独特のユーモアと政治的なメタファーで、世界各地の映画祭で話題となった作品『丸』が日本に上陸する。
本作は鈴木洋平の長編デビュー作品として、大阪の西成区で撮影された。ぴあフィルムフェスティバルのPFFアワード2014入選後、バンクーバー国際映画祭新人監督部門にノミネート。新人監督の登竜門であり、ペドロ・アドモドバル、スパイク・リー、ヴィム・ヴェンダース、リチャード・リンクレイター、ミヒャエル・ハネケといった監督を輩出しているリンカーンセンターとニューヨーク近代美術館(MoMA)共催の映画祭「ニュー・ディレクターズ/ ニュー・フィルムズ2015」に選出、その後、ウィーン国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭など世界各地の映画祭で紹介されている。
監督は茨城県水戸に活動の拠点を持つ鈴木洋平。映画制作活動に止まらず、クラブの空き時間を利用した映画館CINEMA VOICEを企画運営するなど、日本映画界の新たな存在として注目されている。長編デビュー作『丸』は、完成後、映画評論家のトニーレインズの目にとまり、主に外国の映画祭プログラマーや批評家の間で話題となった。イギリス映画協会が発行するサイトアンドサウンド誌上でベストテンに選出、またアメリカの映画雑誌フィルムコメントに批評やインタビューが掲載されるなど、無名の新人監督としては異例の事態を引き起こした。その後、日本にその評判が逆輸入。ついに劇場公開が決定した。
STORY

ある朝、無職の鈴木鉄男とその彼女は、寝室の隅に浮かぶおかしな球体に遭遇し、それに目をやった瞬間、そのままの姿勢で静止してしまう。その状況に気づかぬままリストラを告白し始めた父親も静止。認知症の祖母と帰宅した母親は不審に思い通報するが警察官も次々と静止していく。その空間の時間が止まってしまったのか?それとも球体を見たものの脳に何か反応が起こったのか?警察は、リストラを苦にした父親による籠城と断定、事態は予想もつかない方向へと向い出す。そこに登場した記者の出口隆一は、警察の発表を覆す証拠を掴むが、それがさらなる混乱を引き起こす。。。

【『丸』海外映画評】

デニス・リム(リンカーンセンター映画部門ディレクター/映画評論家)
「今年最も驚くべき日本映画」
 
『未知なる可能性』 トニー・レインズ(映画評論家)
鈴木洋平監督作「丸」は大島渚監督の「絞死刑」以来、数十年ぶりに、日本の停滞した政治・文化・経済に風穴を開けた良作だ。ブラックコメディーでありながら、SFミステリーでもあり、ルポタージュでもあり、問題作でもある本作は、ドキュメンタリードラマの形式でスタートし、ごく平凡な郊外の家族を1人ずつ字幕で説明する。続いて警察の手続きの不手際に焦点を当て、やがて性政治学的な爆雷へと変わっていき、総じてサミュエル・ベケットの小説のようなバックビートを奏でている。要するに、本作は衝撃の長編デビュー作であり、今年一番の喜ぶべきサプライズをもたらす存在だ。いつもどおり、ほぼ全ての日本の評論家は本作から目を背けているが。
 
Filmcomment誌に搭載された批評
日本発の低予算のインディペンデント作品でありながら、想像力が燃えたぎる鈴木洋平のデビュー作、『丸』は、窮屈で小さい家庭空間を、巧みに描写している。この映画においては、「幽閉」というテーマがより色濃く登場し、そこにさらに政治的な側面も加えられている。映画の舞台は、どこにでもあるような郊外の中流家庭。リストラされたことをいまだに家族に打ち明けられずにいるサラリーマンの父親と、一度も職についたことのない息子、さらに祖母は認知症を発症している。そんな中、すべての問題を抱え込み、打ちひしがれる母。ある朝、息子とその彼女は、寝室の隅に浮かぶおかしな球体に遭遇し、それに目をやった瞬間、そのままの姿勢で固まってしまう。彼らは話すことはできないが、意識ははっきりとしている。たくさんの警察官をはじめ、様々な登場人物が室内に入り、その中の1人は、うっかり、バカバカしい形で死を遂げてしまう。その事件を起点に、陰鬱で滑稽な社会風刺や、SF的ミステリー、そして警察手続きに対する、社会派リアリズム的批判が入り混じった、美しく鳴り響き続ける狂想曲が始まる。この映画は、限られた予算ならではの長所を生み出す方法をはっきりとわきまえている。そのことは特に、俳優たちの演技に表れている。彼らは、頭の中で様々な思いが駆け巡り、精神的に崩壊していることをほのめかしながらも、終始自力で動くことはできずにいる。終盤に向け、映画はさらに奇妙さを増し、緊張感は高まっていく。ついに成す術が無くなるまで。最終的に、この映画は、日本社会の病理や無気力に真っ向から立ち向かうため、精神分析家のヴィルヘルム・ライヒや、スティーブン・コバックス監督による家族映画『68年』の魂を呼び起こす。死に体となった日本映画の再興を示す最初の証拠として、『丸』を捉えるには時期尚早ではある。しかし、望みを持つことはできる。ウイーン国際映画祭は、ジャン=マリー・ストローブやハルン=ファロッキなどの偉人に敬意を示しつつも、本物の新しい才能を見つけた時には、その才能を逃すことなく評価している。


チャック・ボーエン(映画評論家) 
「Ow」(※「丸」の英語タイトル)を見ればすぐ、そのタイトルどおりの映画だと分かる(ただ日本語の原題を直訳して「Zero」という英語タイトルにしたほうが、より合っていたかも)。映画の舞台は郊外にある鈴木家で、家族構成は最近リストラに遭ったという事実を隠している中年の父親、一度も働いたことがなく寝てばかりいる成人した息子、認知症ぎみの祖母、家族との毎日にうんざりしている母親。つまり鈴木家は典型的な中流家庭なのだが、今の時代にはそうした生活を維持していくのは難しくなっている。鈴木洋平監督は家庭内の悩みや不安、失望、恥を格子のように張り巡らせて見事に描き出している。緻密に計算された描写は各所に見られる。

鈴木監督の表現は温かさと緊張感を同時にもたらす。鈴木監督はスピルバーグのように共同生活の喜びと苦しみをうまくとらえる才能に長けており、ジム・ジャームッシュのように時々シュールな笑いを交えて社会における孤独を描き出すセンスを持ち合わせている。結果としてヒューマニズムが生まれ、本作がSF的な寓話へと発展するのに役立っている。
 
ダミアン・マニヴェル(「若き詩人」監督)
『丸』の発見は僕に、独創性とは、映画に置いて極めて稀であると実感させた。僕は新しい映像について話しているんじゃない。だって、現代社会は日々、僕たちに新しい映像を与え続け、もう僕らは飽食状態になっているじゃないか。僕は何かもっとシンプルなことについて話しているんだ。例えば、視線の奇抜さについて。僕は世界に新しい視線をもたらし、たとえそれがとても奇妙で、自身にすら、もうそれが何なのか説明できなくなってしまっていても、親密な映像を映し出す一人の映画監督について話している。鈴木洋平は、深く独創的な映画監督だ。仕方がないんだ、僕は彼には別のやり方なんてないんじゃないかと思う。彼は彼の作る映画に似ているし、彼の作る映画もまた、彼自身に似ている。タイトルが僕らに考えさせることとは反対に、『丸』は完全な形に収まることを拒む。『丸』はギクシャクと進んでいく。不条理で不気味な状況を混在させ、時によろめき、ユーモアとともに倒れ込む。僕らは典型的な家族の映画にいると思い込んでいて(家、お決まりの習慣や日常)、気付いたら、サイエンスフィクションの只中にいる。その変化は刻々と姿を変え続ける。身体を硬直させるその時間。日常生活は急停止し、社会のすべては麻痺し、そうして調子が狂っていく。観る者は、滑稽劇を思うだろう。何故なら、本当に小さな身振りひとつで、正真正銘の革命の中に引き摺りこんでくるからだ。正常さは吹っ飛ばされ、権利者たちは力を失い、制御不能に陥る。そして世界は狂ってゆく。その狂乱の中で、彼は身体が世界を変えることができると証明している。そして、それは観る者にとって、かけがえのない物になる。独創性に栄光あれ!どうか良い上映を!!
 
ヴィヴィアン佐藤(美術家/非建築家)
超SF的な軸と超ヒューマニズム的な軸とが交差する唯一の点に宙づりにされたマル。鉄男の「にもかかわらず…」という口癖に象徴されるように原因と結果とがまったく呼応しないこの世界。不在の現前そのもののマルとは、現代日本において、我々自身が産み出さざるを得ない絶望であり希望である。

 
竹内公太(アーティスト)
『竹内さん、「丸」にコメント下さい』(むむっコメントと言われても……えーっと…げ、劇中固まってしまった登場人物達はあたかも〇〇のようであり、それはさながら△△で…だ、ダメだ全く全然思いつかないっしかし何かそれらしいこと言わねばーっんーとんーと、ど、どないしょーっ)「おお…竹内さんが固まって…なるほどこの映画のもつ演劇性とドキュメンタリー性の不思議な邂逅を自ら再演なさってるんですね!」(??? そ、そそ、そういうことにしとくかーっ)


樋口泰人 (映画評論家、boid主宰)
それはまるで地球のどこかで人知れず生きて来たあらゆる人の雑多な記憶の混在でもあるのか、あたかもひとつ場所の連続した時間の中で起こった事件のように見せかけられつつ、しかしどこかランダムに構成されてわれわれを混乱させる。実は我々もまたそのまだらな記憶の中を生きているのだとその混乱の中でふと実感したりもするのだが、いずれにしてもわれわれも登場人物たちと同様、現実にか遠い記憶の中でか、あるいはまたはるか未来においてなのか、とにかく何かを観てしまったのだ。ぼんやりとしてあいまいで不確かすぎるその「記憶」を、この映画は浮上させる。きがつくとわれわれはぼんやりと空を見上げているだろう。スクリーンを見上げるように。

CAST

飯田芳 / 木原勝利 / 金子紗里 / 池田将 / 軽部日登美 / 田中しげこ / 渡辺博行 / 真弓 / 
芹井祐文 / 島田芯八 / 村上ROCK / 山西竜矢 / 月亭太遊 / 大宮将司 / 松浦祐也

飯田芳[鈴木鉄男役] web 
1987年生まれ。Bird label所属。
多摩美術大学在学時より役者として活動し、2011年に森岡龍監督「ニュータウンの青春」に出演。その後、坂下雄一郎監督「神奈川芸術大学映像学科研究室」渡辺紘文監督「そして泥船はゆく」をはじめ、村本大志監督「Amy said」瀬々敬久監督「なりゆきな魂」「菊とギロチン- 女相撲とアナキスト」に出演している。

木原勝利[出口隆一役] 
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1981年生まれ。鈍牛倶楽部D-plus所属。
西田シャトナー主催「LOVE THE WORLD」に旗揚げから活動休止まで全作品に出演。その後、常本琢沼監督「蒼白者 A Pale Women」石原貴洋監督「大阪蛇道」など映画にも進出。近年では熊切和嘉監督「ディアスポリス」入江悠監督「太陽」「22年目の告白」などに出演している。

池田将[鈴木裕太役]
1983生まれ。東京造形大学卒業。本作のカメラマン柏田洋平などと映像制作会社Sundyを立ち上げ、映像作品のディレクターも務める。監督作として「亀」「ツチノコに合掌」「voyage」馬喰町バンドMV「遊びましょう」やユジク阿佐ヶ谷にてロングラン公開されている「映像歳時記 鳥居をくぐり抜けて風」(https://saijikifilm.com)がある。

田中しげこ[鈴木みちこ役] 
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1940年生まれ。プロジェクトコア所属。
大阪を中心に活動し、石原貴洋監督「コントロール・オブ・バイオレンス」などにも出演している。

松浦祐也[中川刑事役] 
web

1981年生まれ。Bird label所属。
曽根晴美の付き人を経て、俳優となる。多くのインディー映画や商業映画で活躍する個性派。坪田義史監督「美代子阿佐ヶ谷気分」山下敦弘監督「マイ・バック・ページ」冨永昌敬監督「ローリング」真利子哲也監督「ディストラクション・ベイビーズ」などに出演している。

大宮将司[大和刑事役] 
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1973年生まれ。アニモプロデュース所属。
石原貴洋監督作「バイオレンスPM」「大阪外道」「大阪蛇道」「コントロール・オブ・バイオレンス」に出演している。近作は永山正史監督「トータスの旅」などがある。

村上ROCK [警官役]
1978年生まれ。怪談ライブバー「THRILLER NIGHTににて怪談師として活動。俳優としては白石晃士監督「超・暴力人間」や長濱亮祐監督「のぼせもん」などに出演している。

STAFF

2014年/89分/カラー
監督・脚本・編集:鈴木洋平
プロデューサー :池田将、今村左悶
ラインプロデューサー:上野修平
脚本:小山侑子
撮影:柏田洋平
録音:平井名辰哉
制作担当:松島愛美、平田圭一 
助監督:田中健太
記録:石橋由紀奈
撮影助手:山中克仁 
録音助手:杉本崇志
球体造形:相沢克人 
ガンエフェクト:FireWorks
合成:木下隆之(UNIT) 
音楽:今村左悶  
ドラム演奏:山本祐輔 
スチール :堀金義久
ケータリング :小山侑子、真弓 
ケータリング応援:清水久美、久貝亜美、濱本敏治
字幕 :岡田まり
宣伝美術:原田光丞
Webデザイン:K5 ART DESIGN OFFICE
宣伝:高田理沙
配給:マグネタイズ
助成  シネアスト・オーガニゼーション大阪
特別協賛:宮崎雅彦、磯崎寛也
 
映画製作応援委員会「丸」代表 根本卓弥

●ご寄付に協力頂いた皆様
戸田昌征  
伊藤尚哉  
勝村巌
今村芳人 
今村智江子
割貝隆仁
津軽石信一
木村光孝
益子篤
須田康信
椎名一樹
小川貴博
鈴木裕太
根本寛之
小林由美子
橋本育子
 
THEATER

●シアター・イメージフォーラム
 〒150-0002 東京都渋谷区 渋谷2-10-2
 Tel.03-5766-0114 website
 上映時間_21:10
 終了未定

 
●名古屋シネマスコーレ
 〒453-0015 愛知県名古屋市中村区椿町8-12アートビル1F
  Tel. 052-452-6036  website
 上映時間_20:10
 8/11(金)まで
 最終日に鈴木洋平監督の舞台挨拶を予定


 
●CINEMA VOICE
 〒310-0031 茨城県水戸市大工町1-6-1ベルスポットビル4F
 Tel.029-239-5727(VOICE) website
 上映時間
 8/12(土)・13(日) 15:00 ※上映後、監督・キャストのアフタートーク
 8/15(火)~19(土) 19:00
 8/21(月)~26(土) 19:00
 終了未定